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結び星

2013.06.10 23:18|FF4 短編
ED後、エッジがミストを訪れているという設定に基づいたお話です。
ブログ開設3周年☆皆様、ありがとうございます!



結び星






☆ ☆




海へ行こうと言い出したのは、君のほうだった。
気まぐれなように見えて、決して気まぐれなんかじゃない君が突然そんなことを言いだしたものだから、君の傍らでまどろんでいたわたしは、すっかり眠りから覚めてしまった。
まだ窓の外は薄暗いようだった。あたりは静まり返り、ホウホウと寂しげな夜鳴き鳥の声が聞こえてくるばかりだ。時計に目をやると、まだ午前4時を指している。今の季節は秋、この山間の村では、日の出までまだ随分と時間がかかりそうだった。
君はわたしに言った。海から昇る、うんと大きな朝日を見たいんだと。今日は天気がよさそうだから、きっとむちゃくちゃ綺麗に見えるはずだ。
一緒に、見に行こうぜ。
目じりに人懐こい笑い皺をいっぱいためて、君はわたしの冷たい頬を優しく撫でる。その言葉にわたしが首を横に振る理由など、あるはずがなかった。
今日の太陽が高く昇る頃、君はまた遠い国へと帰って行ってしまう。次に来るのはまた数か月先になると、昨日聞いたばかりだった。
いつものこととはいえ、どうしようもないほど寂しくて悲しくて、気がふさいでしまう。――けれど、見事な日の出を一緒に見れば、そんな憂鬱な気持ちも空の彼方へと吹き飛んでしまうかもしれない。
優しい君の素敵な提案に、わたしはありがとうと笑顔を浮かべた。
身支度を終えて薄青い闇の漂う静かな村を出ると、わたし達は飛空艇に乗り込み、まだ星の瞬きが残る群青色の空へと舞いあがった。か細い上弦の月は、ゆっくりと西の空に傾き始めていた。
秋の早朝の空は恐ろしいほどに寒く、毛布にぐるぐる巻きになったまま移動するわたしを見て、君はくっくと笑ってばかりいた。そしてパンをくわえたまま操舵桿を握り、世界一お行儀の悪い王様を気取っていたっけ。
空飛ぶ船は、うっすらと白み始めた東の空をまっしぐらに目指していた。どこに行くのと尋ねたら、誰も居ないところと君は答えた。誰も居ない島で、日の出を二人占めしようぜ――。
そう言い、茶目っ気たっぷりに片目をつぶっておどけてみせる。わたしが目をきらきらさせて、わあ素敵と応じると、君はいつものようにわたしの頭をくしゃくしゃっと撫でて、優しく笑った。どうしてそんなに優しく笑えるのだろうと、わたしがたまらなくなってしまうくらいに。
大好きな君の全部を、独り占めしてしまいたい――
突き上げるような熱い思いを、わたしは目を閉じてぐっと堪えた。
君に恋をしてから、もう3年が過ぎようとしている。この歳月の中で少女から女性になったわたしが知ったものは、細胞のひとつひとつまでとろけてしまうような幸せな蜂蜜の味と、会えぬ君を思ってこぼす涙のほろ苦さ。
そして君とわたしが結ばれることを阻む、複雑怪奇な世の中の仕組みというもの。
……あの頃の無邪気なわたしには、もう戻れない。
君と離れて暮らす故郷のこの村での日々は、単純だけれど、平和で充実している。静かに流れる時のなかで、美しい季節を愛で、穏やかな村の人々と交流を深める毎日は、わたしを優しく包み込み、あるべき姿へと導いてくれるように感じていた。いたずらっ子を追いかけ回す魔法学校の先生も大変だけれど、村の未来を育むやりがいのある仕事だと誇りに思っている。
こんなにも恵まれた小さな世界の中で暮らしていると言うのに――それでも、わたしの心には、いつもぽっかりとうつろな穴が空いている。穴の空いた心をもて余したまま、わたしは君を待ちわびて、毎日カレンダーをめくる。
まぶしい太陽のようでいて、静かに降る雨のようでもある、優しい君。わたしというささやかな草花を生かす、かけがえのない存在。君さえ居てくれるのなら、わたしは、うんときれいな花をつけてみせるのに。
……でもきっとこの思いは、君も同じ。
わたしは愛しいその手に、自分の指を絡ませた。そっと握り返してくれた君は、片手を操舵桿に乗せたまま、向かい風に目を細めて、夜が終わり始めた空の彼方を見つめている。
いまや押しも押されぬ一国の主となった君は、夜も眠れぬほどの膨大な問題に頭を悩ませているに違いないだろうに、いまわたしに向けるその横顔は、こんなにもきれいで清々しい。
するとわたしの視線に気づいたのか、君はやわらかい笑顔を向けた。
「リディア、もうすぐ着くぞ」
眼下に広がるのは、夜明け前の黒々とした大海原。そのなかに、ぽつんと小さな島が浮かんでいた。君は様々なレバーを駆使してゆっくりと高度を下げると、静かに白い砂浜に飛空艇を着陸させた。見上げた空には、ミストの村では見ることのできない星座も、いくつかきらめいているようだった。
どうやらここは無人島らしい。島をぐるりと砂浜が取り囲み、中心部は雑木林のようになっているんだそうだ。
きょろきょろするわたしに、「この島には意外と食べられる果物もなってんだぜ。その気になりゃ生活できる」と君は言った。どうやら、何度かお城を抜け出しては遊びに来たことがあるようだ。君らしいなあと、思わず笑ってしまった。そして君のそんなところが、わたしはどうしようもなく好きなのだ。
薄暗いなかわたし達は飛空艇を下りると、手をつないで誰も居ない砂浜を歩いた。ふたりともブーツを脱ぎ捨て、はだしになってしまうと、足元の白砂はさらさらしていて、とても気持ちが良かった。
遠いところからやって来たであろう流木に思いを馳せ、見たこともないような美しい色の貝殻に胸をときめかせた。君は淡い緑色の貝殻をポケットに入れようとしているところをわたしに見つかり、少しばかり顔を赤くしていたっけ。「お前の髪の色に似てっから、持って帰りてえんだよ。悪いか」とぶっきらぼうに言う君は、とても可愛らしかった。そして同時に、どうしようもないほど切なくもあった。
振り返ってみると、まだ薄暗い白い砂浜には、ふたつの足跡だけが続いている。わたし達ふたりの小さな声と、波と風の音。この小さな楽園にそれ以外の音など、聞こえてくるはずもなかった。
ちょっと休憩しようぜと君が言うので、白砂の上に並んで座り込んで、わたし達は徐々に明るくなってきた夜空を見上げた。星々は、ゆっくりとその輝きを失いつつある。
「星座が分かるともっと面白いんだろうけどなあ」とわたしが言うと、「そんじゃあ作っちゃえばいいじゃんか」と君が答えた。
どういうことだろうと眉を寄せるわたしに君は笑うと、腕を伸ばしてのびのびと夜空に絵を描き始めた。
「――ほら、あの星とこの星を結ぶと、チョコボ座のできあがりだ」
うーん、申し訳ないけれど、こんなにたくさんの星がちりばめられていては、正直よく分からない。けれど、自由に星をつなぐ遊びは面白かった。わたしの作ったゴブリン座に、君は「もっとロマンチックなものを作れよ」と顔をしかめ、君の描いた虎鉄座と菊一文字座に、わたしは「どっちも一緒に見えるよ」ところころと笑った。
大昔の人たちもこうして遊んだんだろうねえとしみじみしたり、すぅっと流れる星を見つけては、大慌てでふたりして手を合わせたり。
何を願ったんだと君は尋ねて来たけれど、願い事は口に出すと叶わなくなると伝えられているから、わたしは絶対に教えてあげない。ちぇーと口をとがらせる君にわたしは黙って笑顔を返した。
けれど、わたしには分かる。わたしと君は、きっと同じことを願っていただろうと。そしてそれはきっと、お星さまも――ううん、神様だってうんと困らせてしまう願い事に違いないと。
『王様と村娘が、ずっといっしょにいられますように』。
真っ先に保留中の箱に投げ込まれてしまうんだろうなあと想像して、思わず苦笑してしまった。
するとかすんできた星空を仰ぎながら、君が「お、あれ」と不意に空に向かって手を伸ばした。
「あそこに二つ、星が並んでる」
君の指す方向を見上げてみれば、仲睦まじく並んで輝く、ふたつの光があった。他の星よりもわずかに明るいせいで、目立って見えるわけだ。
「あれ、俺たちの星にしようか」
そうして君は笑って言った。「俺たちがずっと一緒に、いられますように」
願い事は口に出すと、叶わなくなってしまうというのに。





☆ ☆





そして東の空から、ゆるやかに夜が終わり始めた。水平線では青と橙がせめぎ合い、それは美しく、それでいて不安定で、どこか幻界を髣髴させる幻想的な眺めが広がっていた。
やがてゆっくりと顔をだした太陽が、夜の帳を切り裂いていく。陽光が反射した海面には、まるできらきらと輝く道のような一条の光の帯が伸びていた。
こんな景色は久しく見ていなかった。まぶしい輝きに目を細めながら、この瞬間また新しく始まった一日の空気をすぅと胸いっぱいに吸い込むと、心に浮いた錆が消えて行くようだった。
ここから眺める見事な朝焼けは、君が言うとおり、本当に「めちゃくちゃきれい」だった。天気も良いし、それになにより、君と一緒に見られたから。連れてきてくれてありがとうとお礼を言うと、いいってことよと君はおおらかに笑った。朝焼けに照り映える君の笑顔は、とてもきれいだった。
君のお腹がぐぅとなったのを合図に、わたし達はこの楽園を発つことにした。お日様が昇った空はすっかり目覚め、夜のかけらなど、もうどこを探しても転がっていないようだった。
君が見つけたわたし達ふたりの星も、青い空の向こうに消えてしまっている。
「あの星、見えなくなっちゃったね」
わたしが空を見上げたまま言うと、「そうだな」と君は答えた。
「でもまた夜になれば見られるさ」
……そしてそんな頃には、君はもう居ない。
思わず目を伏せてしまったわたしの思いに気づいたのか、君も少しさみしげな笑みを浮かべると、ぽんぽんとやわらかく頭を叩き、頬にキスをした。元王子様の魔法のキスは、少しだけわたしを元気にするのだった。
「また手紙書くからよ」
うんと頷くわたしを、君は優しく抱き寄せた。
あたたかな腕の中で胸に頬を寄せ、わたしはそっと目を閉じる。
……そうだ。
君が帰ってしまって、また寂しい夜が訪れたら、暗い空にあの星を探してみるのもいい。そして同じころ、ちらりとでもいい、君も夜空を見てくれたなら――ああでも、ミストの村でなら見られるだろうけれど、遠い君の国からでは無理だろうか。
だけど――それでも、ふたり同じ星を見上げていると信じたい。結ばれていると信じていたい。
熱いまぶたの裏に、君と見上げた薄い星空が蘇る。
暗い夜空で寄り添うふたつの星は、どれだけ時が経とうと、ひとつにはなれない。北の極星のまわりを、その距離を変えぬまま、ぐるぐると回り続けるばかり。
――けれど決して、離れることはない。
それはまるで君とわたしのようだ。
君とわたしの結び星。夜空の片隅で、静かにきらめく。
たとえどんなに黒い雲に隠されようと。
たとえどんなに、激しい雨に降られようとも。
そしてどれほど冷たい風に凍えようと、ふたりは一緒に、どこまでだって――



この思いは星の光のように永遠だと、いつまでも信じている。





☆ ☆




<END>

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みずたま

Author:みずたま
1980年代生まれ。
aiko、spitz、ケーキ、お買いもの、野球(中日!!)、そしてFF4のエッジとリディアをこよなく愛しています☆
7歳と4歳の娘に振り回される日々を過ごしていますー。

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