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ヒミツ

2013.10.24 01:08|FF4 短編





ヒミツ






さくりと入れた刃先から、芳醇な香りが溢れだす。
わたしの手にはちょっぴり大きい、このりんご。
ローザの手つきを思い浮かべながら頑張ってみるけれど、なかなか上手にナイフは動いてくれない。
ざくざく、ぷつり。
ざくざく、……ぷつり。
わたしの前に増えてゆくのは、まるで削げ落としたような、分厚くて短い不格好な皮ばかり。
真っ赤なリボンのような皮を垂らすことができるようになるには、まだまだ練習が必要みたい。
……あーあ。
小さく肩をおとした時、キッチンのドアが軽やかに開いて。
「お、何やってんの」
入ってきたのは、銀髪のあのひと。
もう、なんてタイミングなんだろう。
ぜったいぜったい、からかわれちゃうに決まってる。
するとやっぱりわたしの手元を覗き込んで、笑うんだ。
「なんだ、りんごの実を剥いてんの?」
……実なんか、剥くわけないじゃない。
エッジってほんとにいじわるなんだから。
つんと口をとがらせてみると、「悪い悪い」って憎めない大きな手が頭を撫でてくる。
こうやって謝ればなんでも許されると思ってるんだから。
いつまでわたしを、何にも知らない小さな女の子みたいに扱うつもりなんだろう。
……なんにも分かってないのはどっちよ。
エッジの、ばか。
そんな雑念だらけで剥きあげたりんごは、案の定一回りも二回りも小さくなってしまっていた。
なんだかもったいないことをしちゃったなあ。
そんなことを思ったとき、エッジがひょいとその皮を自分の口に放り込んだ。
まるで、そう、お菓子みたいに。
……ええっ!?
驚くわたしに、エッジは軽く笑ってみせる。
「だってもったいねえじゃん」
それはまあ、そうだけど――。
「りんごの皮にもいっぱい栄養があるんだぜ。お前、知ってた?」
そう言いながら、ぽいぽい放り込んでゆく。
しゃりしゃり小気味よい音をたてて、なんだか楽しそうに。
「お前ってほんと、美味い皮を剥くのが上手だよなあ。俺じゃあこうはいかねえな」
……む。
それってつまり、皮にいっぱい実が残ってるっていうことじゃない。
でも悔しいけれど、否定はできないなあ。
ふくれっ面をしながら頬張ったりんごの皮は、確かに甘酸っぱくて美味しかったもの。
わたしもエッジやローザみたいに、「不味い皮」が剥けるようになりたいなあ。
するとエッジが、ぽつりと答えた。
「――まあそんなら、お前が不味い皮をむけるようになるまでは、さ」
俺がその練習に付き合ってやるよ。
そう言ってまたひとつ皮を口に入れ、しゃりしゃりと音を鳴らす。
その横顔は、いつもみたいに素っ気なくて。
……どういう、ことかな。
よく分からないながらも、とりあえず頷いておく。
するとエッジはぽんぽんとわたしの頭に手をのばして、こう言うんだ。
「そんなら俺が合格を出すまでは、俺以外の奴の前でりんごを剥いちゃ駄目だかんな!」
ええっ!?
なあに、そのルール!
「別にいーだろ。俺は厳しいセンセイなんだ」
弟子入りした覚えはないんだけどなあ。
不満そうなわたしの顔を一瞥すると、エッジは果物かごからりんごをひとつ取り上げ、するすると滑るように皮をむいてゆく。
そして途中で目をあげると、わたしに向かって得意げに笑った。
……まあ確かに、エッジのナイフの扱いは一流よ。
仕方がないから、センセイだって認めてあげる。
澄ました顔でそう言うと、りんごを剥きながらエッジが小さく吹きだした。
「そーかそーか、そいつはどうも。お月謝は美味いりんごの皮山盛りで許してやるよ」
ほい、出来た。
そう言って作業台の上に、はだかんぼになったりんごを並べる。
エッジの剥いた、丸くてきれいなりんご。
その横には小さくていびつで不格好な、わたしのりんご。
まるでわたしのようだと、なぜだか思ってしまった。
子どもと言うには複雑すぎて。
大人と呼ぶには、やわらかすぎる。
ちっとも素直になれない、わたしのようだと。
……わかっているのに。
「なあリディア、このりんご、おやつにでも出すんだろ?あいつら呼んでくるわ」
そう言ってエッジはわたしに背を向けた。
――言ってみようか。
すこし素直に、なってみようか。
わたしの心が、ことりと動いた。
「ねえ、エッジ」
呼びかけてみると、「なんだよ?」とわたしを振り返る。
涼しいその目元をやわらかくして。
でもね、エッジ。
今からわたしの言葉を聞いても、それでもあなたはまだ、そんな顔をしていられる?
「あのね、さっきのりんご教室のことだけど――」
ああと頷くのを見て、わたしは続ける。
「……あんまり上手に、わたしを教えないでよね?」
「へ?……なんで」
難しそうに形のよい眉を寄せるエッジ。
それを見てくすりと笑うわたし。
ほんとうにエッジは、なーんにも気づいていないんだから。
わたしは笑みを深くすると、「だって」とそれに答えた。
「上手になって卒業しちゃったら、一緒にいられる理由がなくなっちゃうじゃない?」
それだと困るんだよね――。
そう言うとわたしはエッジに背中を向けて、いびつなりんごに割を入れた。
ぱかりと割れた断面には、おいしそうな蜜がいっぱい。

――さあ、エッジ。
露わになったこの蜜に、あなたは一体どんなこたえをくれるのだろう。





<END>

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プロフィール

みずたま

Author:みずたま
1980年代生まれ。
aiko、spitz、ケーキ、お買いもの、野球(中日!!)、そしてFF4のエッジとリディアをこよなく愛しています☆
7歳と4歳の娘に振り回される日々を過ごしていますー。

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