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ポルボロン

2015.08.31 00:14|FF4 短編



ポルボロン





それはエッジも今まで目にしたことのない、異国のお菓子だった。
「ポルボロン、って言うんだって」
色とりどりの丸っこく愛らしい菓子を盛った皿をテーブルに置きながら、リディアが言った。
「この間ね、ローザからもらったの。トロイアのお土産なんだよ」
「へえ。マカロンとは違うのか?」
アイスコーヒーのグラスを置きながら、2月前に遊びに来た際に振る舞ってもらった菓子の名前を出してみる。覚えていたんだ、と言うようにリディアはちょっとばかり目を丸くしてから、「ううん」と笑って首を振った。
「マカロンとは違うの。確かに丸いけど、ほら、マカロンはクリームが挟んであったでしょ」
「あー成程ね。確かにこいつはぺっちゃんこだな」
「うん、ぺっちゃんこだね」
丸いトレイを持ったまま、リディアはくすくす笑ってエッジのはす向かいのソファに腰掛けた。そんな彼女を見て、エッジはちらと思う。こいつが俺の隣に座らなくなったのは、一体いつからだったかな……。
それが果たして喜ばしい変化なのか悪い兆しなのか、今のエッジには分からない。分からないから、わずかなため息が勝手にこぼれた。
「……どうかした、エッジ?」
アイスティーのストローをつまんだまま小首を傾げるリディアに、エッジは笑ってみせた。
「んにゃ、何でもない。さてと、そんじゃおひとついただきますかな」
皿の上には黄色やピンクや茶色などのポルボロンが山盛りだ。外観からなんとなく味を推測してクリーム色をつまんで口に放り込もうとしたエッジだが、それを見たリディアが慌てて「あ、待って」とタイムをかけてきた。
「……へ?これ、お前の獲物だった?」
別に特別な風貌をしたポルボロンではなさそうだったけれど。
きょとんとしたエッジの顔が面白かったのだろう、小さく吹き出してから、リディアはごめんごめんと手を振る。
「ううん違うの。ごめんね、そういうわけじゃなくって――」
そう言って自分も手を伸ばしてピンク色の菓子を取り上げると、エッジに向かって「実はねえ」といたずらっぽい顔をして小首を傾げてみせた。
「このポルボロンって、幸せを呼ぶお菓子、って言われてるんだって」
「幸せを呼ぶお菓子ぃ?」
おうむ返しをして途端にしかめ面になるエッジだった。だって、こんなちんまりした奴が?
けれどそれでリディアが気を悪くした様子はない。むしろどこか嬉しそうに笑いながら、「きっとエッジはそう言うと思った」と汗をかいたアイスティーを飲んでいる。
「でもほら、前にエッジが教えてくれたじゃない。えーとなんだっけ、信じる者は――」
「救われる」
「そうそう、それそれ!だからね、エッジも一緒にやってみようよ」
……やってみる?
眉を寄せるだけで意図したことは伝わったらしい、さすがはかれこれ3年来の付き合いだ。リディアは菓子を持っていない方の手の人差し指を立てると、言った。
「このお菓子をね、『ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン!』――って3回唱えてから食べると、幸せになれるんだって!ほらほら、せっかくだからエッジもやってみて!」
「あ、ああ、おう……」
急かされながらも、にこにこ顔のリディアと手元の菓子を見比べるエッジ。
ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン――か。
しずかに目を瞑りうすく唇を噛んでから、「なあ、リディア」と顔を上げた。
「え?」
今まさに大きな口を開けてポルボロンを放り込もうとしていたリディアだったけれど、慌てて口をすぼめてから「どうかした?」と大きな目をふたつほど瞬いた。
そのエメラルドを見つめたまま、エッジはそっと口を開く。柄にもなく、祈るような思いを込めて。
「俺――それよりも良いおまじない知ってんだけどさ」
「……おまじない?」
「そ。ポルボロンなんかよりも、……たぶんずっと確実に幸せになれるおまじない」
突然妙なことを言い出したエッジに、リディアの目は丸くなるばかりだ。自分に向けられるそのまっすぐな視線が眩しすぎて、エッジはわずかに目をそらすと、「ちょっとお前、言ってみない?」といつもよりも掠れた声で尋ねる。そしてリディアがうなずくよりも早く、言葉を続けた。

「――俺のことが好きだって、言ってみない?」



<END>

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プロフィール

みずたま

Author:みずたま
1980年代生まれ。
aiko、spitz、ケーキ、お買いもの、野球(中日!!)、そしてFF4のエッジとリディアをこよなく愛しています☆
7歳と4歳の娘に振り回される日々を過ごしていますー。

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